ホームフル・ドリフティング 27

♯27 デニーズ南砂店
 
 
 フードコートがD=ダイニングなら、ファミレスはLD=リビング・ダイニングかもしれない。

 と、いきなり言われても何のことやら。本連載のいくつか前の回で書いた、ホームフルにおけるダイニング不在の話だ。家が分散化する現代においてフードコートがダイニングの役割を果たすとすれば、ファミレスはダイニングとリビングを兼ねる存在になりうるかもしれない。

 近ごろよく深夜にファミレスを訪れていて、延々とコーヒーを飲みながら仕事している。とりわけよく訪れるのはデニーズだ。電源もあるしWi-fiもそれなりに安定しているし、ドリンクバーもある。すこぶる快適。深夜になってもポツポツと人は残っている。隣の椅子に足をかけてくつろぐおじさんや、机いっぱいにノートとプリントを広げて勉強する大学生、動画を再生するiPhoneに見入るおばさん、机につっぷして眠るサラリーマン──夜が深まるにつれ、人々の行動はゆるくなっていく。

 もちろん、彼ら/彼女らの行為を「マナー違反」とか「行儀の悪い振る舞い」とすることは可能だ。あるいは「ここはあなたの家じゃないんだから」と咎める人もいるだろう。では、「ここ」が「あなたの家」だとしたら? 家のリビングでくつろぐようにしてファミレスのソファでくつろぐ人々にとって、もはやファミレスがリビングの機能を有しているとしたら?

 ファミレスのように食事をしたりダラダラしたりする空間はさまざまな人にとってのダイニングであり、リビングでもある。フードコートがダイニングの機能のみを有していたのに対し、ファミレスはより一層「懐が深い」といえよう。ドリンクバーが配置されることで随時フロアには人の流れが生まれ、人々は冷蔵庫とソファを行き来するようにしてファミレスの中を動き回る。

 ファミレスのように雑然とした空間が「リビング」になるなんて、と思われるかもしれないが、そもそもリビングとは雑然とした空間なのだ。リビングは個人の寝室と切り離され、親戚や友人など家族の「外部」が入ってくることを許された空間でもある。リビングとはある意味家の外部に最も近い場所なのであり、だからファミレスはリビング的なのだ。

 ファミレスとは言うまでもなく「ファミリーレストラン」を指すが、Wikipediaの情報が正しいとするならレストラン(restaurant)の語源はフランス語で「回復させる」を意味する動詞「restaurer」であるらしい。ならばファミリーレストランとは家族を回復させる場所/家族が回復する場所といえるだろう。それはそっくりそのまま、リビングやお茶の間のことなのだ。

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《著者プロフィール》
もてスリム
1989年、東京生まれ。おとめ座。編集者/ライター。
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