行けたら行きます 7

 完全に私のやる気がない。
 暑さのせいか、疲れか、原稿を書く気に全くなれず、次に出る自分の本の原稿を読み返すのも億劫で、ついつい寝ころがってしまうと、そのまま寝ていたりする。

 先週から石田さんが転移して2度目の抗がん剤治療で入院し、子供たちは夏休みに突入、日中は家に自分一人という状況。これが、石田さんがいれば、狭い家で落ち着かないので、外に出て喫茶店で原稿を書いたり本を読んだり、出かけようとするのだが、朝、子供達に弁当をもたせて学童に送り出し、ネットサーフィンしながら遅めの朝食を一人で食べた後、午前中こそ原稿を書こうと思うものの、そのまま敷きっぱなしの布団に倒れこみ、気づけば昼過ぎということも多々有る。一人は快適すぎる。

 とにかく何もしたくない。

 そんな中、時間を見つけては自転車で汗だくになりながら病院へ向かう。病院は家よりも断然快適で、ある暑い日にお見舞いに行った時には、外に出るのが億劫でなかなか帰れなかった。石田さんと特に話すこともなく、無言でベッドの横に座り、地蔵のようになる。「もう働きたくない・・・」と口から出た時、石田さんはすかさず「稼げる旦那を見つけないと」と返してきた。それに乗っかって盛り上げるほどの気力もなく、そうねえ、とだけ返事をする。

 9月には石田さんの書き下ろしの新刊が出る。原稿の直しもほぼ終わったらしい。担当編集の宮里さんが原稿を依頼してきたのが去年の初め。4月から1年かけて書き上げた、石田さんの「家族」についての考察。宮里さんもすごいタイミングで依頼してきたよね、としみじみしている。確かにそうかもしれない。石田さんの本がこれで最後とは思いたくないが、その可能性だってもちろんある。最近の石田さんの口癖は「どうなるかわからない」だ。
 ある雑誌で石田さんの特集を組んでくれるらしく、退院してからのインタビューや撮影が控えている。とはいえ石田さんの体調次第でもあり、無理はできない。それでも、
「ここへきていろいろ残してくれようとする人がいるのはありがたいね」と穏やかに言う。

 今週の月曜に発売されたAERA(2017年7月31日号)のノンフィクション連載「現代の肖像」にラッパーECDが登場しています。文章は石田さんとの付き合いも長い、ライターの磯部涼さん。私は写真を撮りました。是非見てみてください。

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《著者プロフィール》

植本一子(うえもといちこ)

1984年広島県生まれ。

2003年にキヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞、写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活躍中。

著書に『働けECD―わたしの育児混沌記』(ミュージック・マガジン)、『かなわない』(タバブックス)、『家族最後の日』(太田出版)がある。

『文藝』(河出書房新社)にて「24時間365日」を連載中。

http://ichikouemoto.com/