土の上 7

俳句日記2(二〇一五・十二~二〇一六・四)

電話口「もっと林の方ですか?」
通路には蜘蛛の巣張るの禁止です
振り向けば布団を蹴って眠る子よ
何度でもかけてやる母さんが
冬空の下に汗かき生きている
純度一〇〇パー無垢の塊
通路には蜘蛛の巣張るの禁止です!
暗闇にライトボックス 光る白
夜を吹く風はどこからやって来て
私の窓を叩くのだろか
今日の晩 銭湯行こか
天井に大きな風呂を描きつ 寝そべる
ひんやりと湿った朝の土の上
子の粥に刻む 春菊を摘む
粥好きの子は粥と聞き
満面の笑みを布団に隠して待てり
できるなら代わってやりたい
この先に何度思うのだろうか知れず
石ころを蹴飛ばし歩く
淋しいとか つまんないとか 飛んでは返る
早引きの迎えに行けば
子供らに囲まれ 聖徳太子の気分
しろとあかときみどりって似合うね
イチゴの話
園庭にソリ跡残し去ってった
サンタがくれた菓子食う娘
菓子屑を机に残し子は寝ており
スキップで夜道を走る二人かな
ケータイを持たぬ我が子に念送る
『鮭ご飯の骨注意するべし』

凍てついて息吹きかけて溶かす手に
かすかに臭う 灯油の匂い
南天の実に問う赤さの根源は
自分にないものなんだと解る
日が落ちて
ビニールハウスの灯りだけ
温かそうに照ってる夜道
人形に聞こえぬように耳打ちする
腕に針刺され眺める大木に
群がる鳥たち 軽やか うらやまし
友の子の写真が届き
私らのママ友編がスタートする
春夏秋
次の季節が何なのか知らぬが越す冬
頬赤くして
耳すまし 湯の沸く音を待ち寝入る
「あしたがあさって?」「明日は明日です」
子供らの手紙の中身は
「だいすき」の字ばかり踊る 毎回毎回
折り紙を折るように巻く春巻きに
巻かれた春をパリパリ食べる
外出たい気持ちを抑え 窓開けて
空気だけ吸う
缶詰の中
駆け抜けた桜並木に心が躍る
図書館の窓越しに見る桜 手届きそ
朝一番 米炊けるまで 縄を跳ぶ
ヨモギの葉 ボウルの水に浮き薫る
開ききらん 新緑の葉よ 蝶の羽の様
絹さやの蔓に付く蜘蛛と目が合った
字引こうと辞書を開けば葉ばかり引けり
舞う蝶の数 数えたら五羽だった
なぞなぞの初めの言葉はいつも「あのぉー」
子見送り
静かな家で少しだけ
布団に埋もれ二度寝する

◇◇◇◇◇
《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com