土の上 12

俳句日記3(二〇一六・五~二〇一七・六)

部屋の向こう 民謡聞こえるラジオから
ボウリング スコアのピンが葡萄みたい
無造作に置かれたティッシュ
「これ作品?」確認してからゴミ箱へ
君からの花の写真を見て眠る
塩茹での空豆食べる
六歳の娘の今は今だけと気付くと寂し
旬は短し
空耳の蚊の音 ループする 夜中
あやとりが一人でできたから
二人 バンザイ叫ぶ でっかい声で
帰ったらアイス食べよと毎日言う道
遊びたくなくても遊ぶ 母さんだから
人形の世話を預かる午前中
「せつない」の意味問う娘に 辞書引く私
なりたてのカエル放たれ
下手糞に跳んで消え行く草の中
桃を手に「おしり」と連呼 六歳児
ツバメが十人 カエルが二人
ABCDUSB~♪
夜の灯に群がる虫らと共に過ごす
プールへと急ぐ我らを鬼百合が
草の陰から俯き見てる
両足にくっきり記す 夏の陽を
ミニカーに混ざって 窓辺 蝉 陳列
ママよりもいっぱい汗かいた
33くらい 娘の汗指数
消失点 追いかけ 山の稜線辿る
秋の風もたらし 台風 北に消え
ぺしゃんこの空き缶 柿の葉 葡萄の皮
下向き歩いた もう秋の道
道横断して駆ける子ら 動物に似て
帰り道
摘んだ木の実の毒で死ぬ
振りする母に子は騙されず…

風吹いた
外から帰ったばっかりの
冷たい小指と指切りする
どーっちだ 拳の中から 小さな葉
床の上 涙の池を 見つめ泣く
何でもない事の幸せ 傍居れば
正月のお屠蘇 グラスにウィスキー少し
小鳥の様な口笛吹けた一月十二日
友だちとムカデ 蜘蛛 ゴキブリの話
ヤッホーと外から聞こえ 窓開けて
やまびことなり叫ぶ
ヤッホー
膝にお盆載せストーブと昼囲む
少女たち
一年生になったらと今しか歌えぬ歌うたう
少しくらい休めよと言う様な風邪
木蓮の咲き乱れたる庭 数え
どこにでもハートを見つける 少女らは
助手席に乗せた苺が香る 帰路
ゴミ屋敷にも春が来てチューリップ咲く
夜に葉の揺れる音 雨音かと間違う
帰り道
迎えに行けばグミの木の下で娘は道草を食う
日曜朝
道路交通情報の「本百冊が散乱」が
頭の中に本をばら撒く
嵐明け 朝 三匹のムカデへたる
走ってるだけでたのしいしあわせ 七歳
晴れてたとか雨降ったとか寒いとか
電話の向こうの天気知る
戸を開けて蜘蛛と一緒に庭に出る
雨降って止んだ また降ってまだ降り止まぬ
投げキッスしておやすみの合図とする

◇◇◇◇◇
《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com