土の上 25

 クリスマスが近づいてきて、街の装飾や友人の贈り物からもそれが感じられる。車でラジオをつけると『ホーム・アローン』のサウンドトラックが流れてきて、ボリュームを上げて寒々とした田舎道を走った。
 一年を通して色んなイベントがあり、誕生日なんかも加えると少し忙しすぎやしないか、とやや疲弊気味だけど、やはり子どもにとってはクリスマスは一大イベントらしい。娘は何ヶ月も前からサンタさんにあれをもらおう、これをもらおう、と欲をかき立ててきた。今年はクリスマスツリーも購入して、まだ数の足らない手作りのオーナメントが寂しく飾られている。

 私の父は元牧師で、クリスチャン家庭に育ったため、我が家のクリスマスは一年の中で最も盛大に行われるイベントだった。クリスマスイブの夜には教会でキャンドルサービスがあり、明かりを消し、火を灯した蝋燭を手に礼拝が行われる。いつもの日曜日の礼拝は嫌々行っていたけど、この日だけは好きだった。
 私は赤ちゃんの時に住んでいたフィンランドで幼児洗礼を受けている。その時にお世話になった人々が私宛に毎年クリスマスプレゼントを送ってくれた。いつも私だけプレゼントが多いから、他の兄弟たちから羨ましがられた。遠い異国からのプレゼントは小さな私にとってどれほど嬉しかったことか。少し虫が食ってしまった手作りのサンタの人形を今でも大事にしている。家族宛のクリスマスカードからも本場のクリスマスが感じられて嬉しかった。

 教会のクリスマス会は、毎年同じような劇やゲームをした。この時は近所の子どもたちもやって来る。人集めのために母や教会の人たちが学校の門の所でチラシ配りをするのが恥ずかしくて嫌だった。普段は学校で会う同級生たちが、私の家の教会にいるのはすごく緊張する時間だった。そんなわけで、教会のクリスマスにはあまり良い思い出はないけど、母の作るクリスマスのごちそうは大好きだった。フィンランドで覚えた様々な料理を腕を振るって作ってくれた。鳥の丸焼きやミートパイ、ジンジャークッキー、トラケーキ、クリスマスパイなど。なかでもカリヤランピーラッカというフィンランドの伝統的な料理は家族内で人気があった。ライ麦生地でミルク粥を独特な形で包んで焼いたもので、ゆで卵をつぶしてバターを混ぜたものを塗って食べる。不思議な味だけど、この時だけ食べられる特別感も相まってすごくおいしかった。家族でテーブルのごちそうを囲んで食べる、とびきり幸せな時間だったんだなぁと思う。

 今年はどんな風に過ごそうか。ひとまず『ホーム・アローン』を借りてこようか。

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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com