山田参助「単行本刊行に寄せて」
オットセイの漫画をひょんなご縁で描き始めて一年経ちました。
わたしとオットセイの出会いは2006年にマガジンファイブから出た「やる気まんまん」のアンソロジー本で、もちろん子供の頃に電車の中で大人が読んでいた、はたまた車内に捨てられた日刊ゲンダイ紙を見かけたりしていたとは思うのだけど、ちゃんと読み物として向き合ったのは大人になってから。
サン出版の雑誌「性生活報告」や日活ロマンポルノなどの昭和のエロ文化が大好物の自分が横山まさみち先生の艶笑路線を嫌いなわけがなく、オットセイの愛嬌溢れるキャラクターデザインやセックス・ファイトの珍修行に打ち込む女性キャラクター達に夢中になり、また「どん亀野郎」でファンになったバロン吉元先生が横山プロ出身であることも知り、自分の愛好するものの点と点がつながるように思って嬉しくなったりもしたのでした。
そのアンソロジー本が出版されたときには横山先生はすでに故人だったのですが、巻末に大西祥平氏を聞き手に「やる気まんまん」執筆に携わったアシスタント諸氏と現・横山プロ代表の横山晃彦氏のインタビューにページが割かれていて、そこで「やるまん」の現場では女性キャラ、オットセイなどのキャラクターがアシスタント諸氏の分業で描かれていたことを知り、
(ナント、世の中にはオットセイを描くという仕事があるのか!)
と、少なからざる衝撃を受けたのでした。今思えばちょっと間違っているような気もするけど、まあよし。そこでわたしの頭の中に一つの妄念が入道雲のようにむくむくと湧き立ちました。
「横山プロでオットセイを専門に描く人になりたい!」
という、当時三十代前半の男の考えとしては少々危険な考えが。
そして時は流れて2020年。数々の作品が執筆され、当時の資料などもそのまま残された横山プロダクションの仕事場で、わたしは「新やる気まんまん オット!どっこい」の執筆をスタートすることになり、本当にほぼ毎日オットセイを描いています。
ちょっと待って。これっていわゆる「胸にそっと温めてきたドリーム叶った状態」じゃない?
アメリカン・ドリーム的な。もしくはマンハッタン・ジョーク(河合奈保子)的な。
いやいや、そんなことはともかくわたしが何のためにこの漫画を描いているかというと、オットセイというキャラクターがまだまだ愛され足りないのではないか、という考えに因るものなわけです。
いや、もしかするとオットセイがわたしの肉体を利用して世の中に愛されようと欲望しているのかもしれない。
オレハ操ラレテイル!もしくは私たち、入れ替わってる~!