#05「瞼(前編)」
陽が落ちて雨が降った
避けきれないぬかるみをやむ無く歩き帰れば
雨水 やがて靴に流れ込み
肺胞 溜息で充ちる
吐く毎に爪先冷え行き
溜息 嗚咽に変わる
真冬の雨染みた靴重く
気分と共にぬかるみに沈むようだ
顔しかめ雨路を急ぐ
街灯を伝い路地を渡り
ぬかるみはなるべく避けるが
傘叩く雨重く
悴(かじか)む指に力込める
マスクに籠った呼気で暖取れど眼鏡曇り
体傾けながら粛々と進む
不意に右脇より闇せり出し
視界斜めに飛んだ
左側(さそく)ぬかるみを感じ
刺す様に雨水染み入る
右側(うそく)疼痛と共に動けず
しかし霰(あられ)じみた雨粒に
鋭く耳腔(じこう)打たれ飛び起きれば
そこには
額から血を流した仔象(elephant carf)が佇んで居り
じっとこちらを見ながら言った
「さあ、天国へ行こう」
(続く)

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◾️イルリヒト
音楽家/文筆家/画家
アコースティックギターと電子楽器による即興演奏を主とした公演活動を行なっている。2024年よりアヴァンポップバンド「マヴォ」にてヴォーカル&メロトロン担当。
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