#08「祖母の土葬 (後編)」
イルリヒト
【1】
埋葬の翌日、祖母宅で遺品整理が始まった。と云っても働くのは大人だけで、冬休み中だった私たちは炬燵で蜜柑や菓子を食べながらTVゲーム等して過ごしたが、当然盛り上がる筈もなかった。
私は朝から祖母のことばかり考えてしまい、その度に土中の冷え切った真っ暗な棺の中で真っ白な顔をした祖母が寂しそうに横たわっている姿が頭の中に浮かんで来るのが悲しくて怖くてたまらなかった。だから従兄弟たちが遊ぶゲーム画面上のキャラクターの動きを目でひたすら追いつづけることで祖母のことをなるべく考えないようにしていた。
やがて作業を終えた両親と共に自宅に帰ると、形見分けされた祖母秘蔵の古写真を見せられた。若い頃や娘時代、更には生後すぐ撮られたもの等、それまで知りようの無かった古い時代の祖母の姿を初めて見る事で、一時的に気分は盛り上がったが、直後に今は間違いなく墓場の土中で冷たく横たわっているのだと思うと、幼いなりにも「人生の虚しさ」みたいなものを感じてしまって一気に暗い気分になったのを記憶している。そして相変わらず頭に浮かんでくる祖母の遺体のイメージを一層苦痛に感じる様になった。
きょうだいの居ない私は自宅で独りになる機会が多く、そんな時はTVを点けたところで気休めにもならなかった。背後が怖くてたまらないから壁を背にして座れる場所を選ぶ様になり、出来る限り目をつぶらないように努めた。そうする事で、まるで取り憑いたかの如くひっきりなしに脳裏へ浮かび上がってくる腐りゆく祖母の遺体のイメージがもたらす逃げ場の無い恐怖の日々を何とかやり過ごした。
【2】
土葬の際に被葬者の真上に築かれる土山の事を、土饅頭(つちまんじゅう)という。
初七日の法要で祖母の墓前に参ると、埋葬の直後は「粗い土山」といった様相だった土饅頭の表面は、数日冬の風雨に晒されたためか固く滑らかに変化しており、何というかようやく「お墓」になった感じがした。
三回目に墓参りの時に土饅頭が少し低くなった様に感じたのだが、あまり気にしなかった。
しかしその次の墓参りには土饅頭は確実に低くなっていた。
否、正しくは〝沈んでいた〟のだ、明らかに棺の形に沿って。
私はその時ようやく土饅頭を作る理由に気付き戦慄した。
その後も墓参りの度に土饅頭は沈み続け、それを見る度に祖母の棺の蓋が土の中で朽ちて祖母の遺体の上に直接土が被さっているイメージとなり、更には祖母の遺体が腐り落ちてゆくイメージへと恐ろしく変貌していった。
その後も棺の形に沿って土饅頭は沈んでゆき、遂には地面が棺の底まで到達したと思われるくらいまで下がってしまった。そして半年もすると棺の周辺までも大きく臼状に沈み、例えるなら浅い蟻地獄みたいな様相になっていた。そしてこうなるともはや古墳に近い感じがしてきて、祖母の遺体に対する私の恐怖心は嘘みたいに消え失せた。
やがて祖母の遺体を中心とした蟻地獄は埋め立てられて平(なら)され、真上には先祖代々を祀る立派な墓石が建てられた。
祖母の埋葬の後、その地域で土葬が行われたという話は聞かない。

(「祖母の土葬」完)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
🎸ライブ情報🔥
【箱庭のパライソ】#2
2026.10.11(sun) 17:00 START
@桜台POOL
基地外楽団【マヴォ】による異端音楽の祭典『箱庭のパライソ』#2
今回もそれぞれが強烈な個性を放つ独創性の極めて高い厳選アーティスト4組
FAMILYMAN
THE EARTH TEMPLE
U.G MAN
MONE¥i$GOD
に、主催のマヴォを加えた5バンドで開催
記憶に刻まれる一夜となるだろう
🎧配信情報⚡️
(Apple MUSIC、Spotify、YouTubeMusic他、さまざまなサービスで視聴可能です)
東京アンダーグラウンドシーンにおいて長きに渡り各々精力的に活動を行って来た旧知4人により2023年に結成されたマヴォ (ex-因果,PIGMEN,DUDMAN,ex-NAMASTE,ex-The Slowmotions) 10代の多感な時期にライヴハウスで真正面から喰らったジャパニーズパンク&アンダーグラウンドミュージックの衝撃を髄に、そこからジャンルレスで浴びるように体験し続けて来た膨大な量の音楽を血肉とした独自の解釈で、世界に誇る日本発アンダーグラウンドミュージックのアップデートに挑み続けている彼ら渾身の1stフルアルバム 有りそうで無かった音がここにある
ーーーー
◼️楽曲(アナログ&デジタル)制作,絵画(挿絵,イラストetc)制作,イベント出演(マヴォ,イルリピト,ソロ),他各種オファー及び問い合わせはInstagram DMまで