土の上 17

 長い雨と台風が過ぎ去り、気持ちの良い晴れの日々が戻ってきた。前回の台風で折れた木の枝はかろうじて皮一枚で繋がっていたものの、今回の台風で完全に折れてしまった。


 庭の畑では、先月末に種蒔きしたほうれん草、サンチュ、人参、空豆、ルッコラ、レタスなどが芽を出し、徐々に葉を大きくしている。間引き菜はやわらかくて美味しく、小さくてもその野菜の匂いがしっかりする。三年目にして初めて実を付けた柚子は少しずつ黄色く色づき始め、すだちも九個収穫することができた。
 夏のオクラとモロヘイヤはそろそろ終わりかけで、ニョキニョキとよく生えていたアスパラも最近は出てこなくなった。アスパラは三年前に種を蒔いてから初めて小さな赤い実がなり、採種するのを楽しみにしている。
 野菜を育てていると、見たことのなかった花や種を見ることができる。違う野菜でも同じような花を咲かせたり、意外な形の種の入った実を付けたり、それぞれよく見ていると面白い。そして、いつの間にか種がこぼれて発芽しているのを見つけると、何だか得をしたような気分になる。ゴボウやパクチー、三ッ葉や紫蘇などはそんな感じで勝手に生えている。
 少し前まで昼夜問わずにそこら中で鳴いていた虫たちは、夜しか声を聞かなくなった。蚊は未だにしぶとく辺りを飛び回っているけど、季節は冬に向かっているのだなと感じる。

 毎年、秋になると窓を拭く。今週は久し振りに晴れたので窓拭きをすることにした。我が家の窓は多く、全部で八十六枚ある。脚立とバケツと雑巾を携え、家のすべての窓を拭いて廻った。窓ガラスは黄砂や台風の雨、蜘蛛の糞などで汚れていた。時々、得体の知れない小さな虫の卵にギョッとしたり、蜘蛛の巣を払いながら、夏の名残を落としていった。除草作業ほど結果がわかりやすくはないけど、ずっと気になっていた汚れが落とせて満足した。

 次の日の朝、窓はひんやりとした外の景色をくっきり映していた。すっかり冬の朝のようだった。
 せっかく綺麗にしたのに、また台風が来ているという。

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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com