土の上 16
宮崎信恵
うちの家の風呂場の隣にはサウナ小屋があり、寒い時期には大活躍する。父がフィンランドに住んでいた頃にサウナの虜になり、三十五年前に建てた実家にもサウナ小屋を作ったのだけど、薪を燃やす際に出る煙が近所迷惑となり、周囲に住宅が建て込んでいる実家では使えなくなってしまった。そのため、新しく建てた私の家に新たにサウナ小屋を設けた。
冬のお風呂は何より気持ち良くて最高だけど、面倒な時はシャワーだけで済ませたい。そういうときはサウナがちょうど良い。あまり時間がない時は、風呂場に繋がっているドアを開け放して暖房代わりに利用する。シャワーをするだけでも結構体が温まる。
うちのサウナは、父が徳島に来たときから付き合いのあるフィンランド人宣教師に頼んでフィンランドから取り寄せた。見た目は薪ストーブに似ていて、同じ要領で下部の扉を開いて薪を放り込んで燃やし、上部に載せた石を加熱する。そうして温まった小屋の中に腰掛け、熱々の石に水をかけてその蒸気熱を浴びながら汗を流す。
火の焚き付けは、紙をいくつかねじり、薪の下に置いて着火材とする。仕事で絵を描く際に下書きなどの不要な紙が必ず出るから、この時にここぞとばかりに燃やしている。紙に火をつけるとすぐに薪共々勢い良く燃え始める。薪が乾燥してさえいれば着火は簡単だ。サウナに入る少し前に火をつけて、しばらく放っておくと小さな小屋は熱気で満たされている。自分で火の調節をしながら入るサウナは、銭湯などで入るのとはまた違った気持ち良さと楽しさがある。
火を焚くという行為はなぜだかすごく楽しい。少し悪いことをしているようで、子どもの頃に虫眼鏡と太陽の光で紙を焦がしたり、マッチを擦って草を燃やしたりしたことを思い出す。
火はいつまでも眺めていられるから不思議だ。どこか、海の波を見ているのと似ている。以前に父が「人間は火と水を見てたら心が落ち着く」と言っていた。そうだよなぁと思う。
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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com