第5回トーチ漫画賞「榎本俊二賞」受賞作家、待望の初連載——社会を揺がすポリティカル・ゴシック。
暗闇会館の図書室で働く司書・田名部咲は、
新任の記録士・杉沼瞬と共に、
戦前資料を収めた地下書庫のアーカイブ化を任される。
ある日の午後、点検のため地下書庫へ下りた咲は、
突如退路を断たれた先で「謎の声」を聞き、意識を失う。
「想像力は、人を殺すと思うか。
きみは、山賊に組するのか——それとも、紳士に堕するのか?」
社会の深淵。戦前・戦後の継ぎ目に沈んだ、声なき証言が浮上する。
記憶と記録は誰のものか?想像力は救いか脅威か?
「知」を守る者たちの物語が、いま幕を開ける。
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◎暗闇会館とは・・・民間の国際交流施設。
暗闇坂の上に100年以上前から存在し、
交流の場であると同時に、国際政治の研究機関を運営している。
戦後は米国と安全保障政策を協議したことを端緒に、
会館には多数の研究員が在籍し、世界情勢に関する記事や論文を発表してきた。
しかし戦前には孫文、ファン・ボイ・チャウ、大杉栄ら、
アジアの活動家や革命家たちが潜伏。
彼らの手記や蔵書は地下書庫に保管され、現在は非公開である。
当時の実態は謎が多く、理事長や評議員でさえ全貌を把握していない。
※※なお、社会運動に向けた多額の献金は、
太平洋戦争期に接収されることなく「消失」したとされている※※
戦前と戦後で大きく姿を変えてきた暗闇会館は、
いま、大きな変革期を迎えようとしていた——。
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〈次回、第2話は2025年12月25日(木)更新です〉

今井新
1992年港北ニュータウン生まれ。
2021年『F』(Glacier Bay Books)にてデビュー。
2024年『フラッシュ・ポイント』にて第5回トーチ漫画賞榎本俊二賞受賞。
2025年白髪が突然増えた。
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