Vol.5「後悔」
堀北カモメ
昨年のサッカーワールドカップ、日本代表の活躍素晴らしかったですね。
決勝のアルゼンチン対フランス戦も凄まじい展開で、開催中は連日感動を頂きました。
そして2023年はラグビーのワールドカップ、フランス大会の年です。
2019年のワールドカップ日本大会では、日本代表戦が無い日もレプリカユニフォームを着て街を練り歩き、初めて決勝トーナメント進出を決めたスコットランド戦は、歴史的瞬間を会場で観戦する事ができました。
積み重ねてきた肉体に桜のジャージを背負い、フィールドに向かう選手の背中。地鳴りの様な歓声。
生涯忘れる事の出来ない光景です。
歳を重ねるほどアスリートのひたむきな姿に感動する様になりました。
ですが実を言うと、以前はスポーツを観る事はそれ程好きではありませんでした。
それは自分自身に対し、後ろめたさと後悔があったからです。
僕は高校時代ラグビー部でした。
でも、僕はあまり人にラグビーをやっていたと言いたくありません。
真面目じゃない方のラグビー部だったからです。
練習もせずに、部室を溜まり場にして遊んでばかりいました。
トレーニング室使いたい、タックルしたい、でも練習はだるい、そんな集まりです。
担当編集者の中川さんとも以前話したのですが、90年代半ばから2000年初頭の頃って、一生懸命やるのがカッコ悪い、真面目なのがカッコ悪いって風潮が今よりありましたよね。
自分はまさにそんな感じで、「ダルい」、「ウザい」、「適当」、一日に何回言っていたのかわかりません。
もしもあの頃スマホがあったなら、今頃全身黒歴史のデジタルタトゥーで埋まっていたと思います。
映画「桐島、部活やめるってよ」で、松岡茉優が役をやっていた子が、部活を頑張っている友達に「よくやるよねえ、ダルくない?」みたいな感じの事を言うシーンがあります。
それを初めて観た時、僕は胸がギュウっとなってうずくまりました。
松岡茉優が役をやっていた子の男版が、当時の僕だったからです。
その時付き合っていた恋人に、同じ様な事を言った事があるからです。
テニスを頑張っていたその子に対して、「練習なんてサボったらええやん」みたいな事を、僕は言っていました。
最低ですよね。
しかも自分は真面目にやってなかったにも関わらず、ラグビー部最後の試合で負けたら泣いたりしてるんですよ。
でもあの涙は、悔しくて泣いた涙じゃなかったと思います。
やりきって、全て出し切って、それでも届かなかった、その時に流れる泥と汗が溶けた美しい涙なんかじゃありませんでした。
一生懸命やらなかった。
打ち込まなかった。
挑戦する事をしなかった。
その不甲斐なさと後悔の、チャラついた髪の整髪料が溶けた情け無い涙でした。
1番カッコ悪いのは自分だ。
それに気づいた涙だったのです。
力を出し切る事が出来れば、例え負けたとしても「やるだけやったけど駄目だったよ」と、爽やかに負けを認める事が出来ます。
挑戦した自分に対しての誇りが残ります。
でも自分に挑戦する事をしなかったら、その事実が後悔としていつまでも残ってしまいます。
あの時の全然減ってないスパイクは、今も部室に置いてけぼりにしたままです。
東北楽天ゴールデンイーグルスのコーチ時代のデーブ大久保が、当時選手に話した事をラジオで放送していました。
観客は何に感動するのか。上手いプレーを観た時?勝利を観た時?違う。一生懸命な姿を観た時だ。その人から一生懸命さを感じた時、人は感動するんだ。だから紅白戦であっても絶対に手を抜くな。
僕の漫画を描く机の壁に、この時のデーブ大久保の言葉を書いた紙が貼ってあります。
あの頃自分は一生懸命やれなかった。カッコ悪かった。
だからこそ、ひたむきにボールを追う選手の姿に憧れを感じてしまうのです。
自分も、今度こそは。
というわけで、
堀北カモメは2023年ラグビーワールドカップフランス大会、日本代表を応援しています!
がんばれ日本代表!!
そして次回のキラキラ通信もお楽しみに。
バイバーイ☆
痛みも、悲しみも、後悔も……俺がまとめてブッ直ぉぉおす!!!!
元補修職人がブッ描く! 超絶職人バトルエンターテインメント!!!
金子・42歳・(株)カワサキリペアの補修職人。
仕事はいい加減だが会社の仲間たちに助けられながら地道に暮らしている。
「清らかで美しい社会生活」を掲げる清浄党が国家権力をほしいままにする中、金子はある日派遣されたマンションの異変に気づく。
それは「人の絶望を食う」とされ、不当に虐げられてきた〝ゲモノ〟たちによる死闘の幕開きを告げるもので……
第1回トーチ漫画賞「山田参助賞」受賞! 『シシファック』作者が描く不撓不屈の物語!