推薦文 蝉川夏哉

『宙に参る』はいいぞ!

小説家 蝉川夏哉

コロニーが軌道上に浮かび、人工知能が今よりも遥かに身近になった近未来。
主婦である鵯ソラが人工知能である息子の宙二郎と共に、亡き夫の遺骨を地球へ届けるために旅をする物語である。

「SFってちょっと難しそうだな」という人から「SFを堪能し尽くした」玄人にまで広くおすすめできるのが、『宙に参る』。
未来過ぎず、かと言って想像力は掻き立てられる宇宙時代を舞台に、少し不思議な主婦ソラと宙二郎の行く先々に巻き起こる事件と遭遇する愛すべき人々と人工知能たち。

ロードムービーのようにソラ達の旅する未来の宇宙は、今より便利で、それでも人々は労働から解放されたわけでもない、ありそうな姿を見せてくれる。
悲喜こもごもの人の営みは、いつの時代も変わらない。ああ、こんな未来なら、長生きしてみたいなと思わせてくれる。

堅苦しい話は措くとして、私はこのマンガが好きだ。
キャラクターに血が通っていて、それぞれがそれぞれにしっかりと物を考えている。(そしてみんな賢い)
将棋衛星から宇宙時代の未来の宗教まで、作者の広範で留まるところを知らない想像力と該博な知識、そして地に足の着いた描写力で描き出される世界に行ってみたくなる。
どのエピソードも魅力的だが、私はバスガイドさんの話が好きだ。
人工知能であるがゆえに全てのお客さんとのやりとりを記憶し、それが故に……
どの話も魅力的で、読者としては嬉しく、創作者としては作者に嫉妬してしまう。
『宙に参る』には全篇を通して、語り尽くせないほどの叡智と希望が詰まっている。

優しくて、愛に溢れていて、妙に生活感があって、未来への希望に満ちたこのマンガを、ぜひ手に取ってもらいたい。
読み終えて顔を上げたとき、世界が少しだけ明るくなっていると感じるはずだから。

……私も、おでん屋で「ドラゴン」をいつか食べてみたい。

お知らせ

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    ソラと宙二郎は次の寄港地「シアッカ」へ。特装版は大充実の48P冊子付き。(冊子表紙イラスト描き下ろし。仏語版第1話&翻訳者コラム・世界観資料集・豪華ゲストによる寄稿イラスト、漫画、推薦文を収録)

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