推薦文 浦井のりひろ

 SFというジャンルが昔から好きで、それはたぶん今より遥かに技術が進歩した未来を描く作品が多いからだと勝手に思っているのですが、その中でこんなにも現在と地続きだと感じさせるSF作品はそうないのではないかと思います。
 主人公のソラは、夫が病気で亡くなり、遺骨を義母の住む地球に届ける旅に出ます。「宙に参る」に出てくる人々は宇宙にまで活動の場を拡げても、最愛の人の遺骨を家族の下へ届けようとし、好きな バンドの音源の電波を拾おうとし、裏メニューを頼めるくらいおでん屋台の常連になろうとします。今の僕らと変わらないのです。宇宙船で、スペースコロニーで、いつも通りの営みを続けるこの世界の人々が大好きです。
 唯一大きく違う所が、リンジンというロボットの存在です。自らの意思を持ち、人に寄り添うその姿は、どうしようもなく愛おしい存在です。ソラの息子宙二郎も、彼女がハンドメイドで作り上げたリンジンです。人間の子供と同じように、親と小競り合いをし、友達と遊んだりします。
 このリンジンにはいわゆる寿命があり、リンジンの喪失とそれを乗り越えようとする人々の姿が幾度も描かれます。この世界の人々はとにかく分け隔てがありません。どんな人も、どんなリンジンも、この世界の一員なのです。とても素晴らしい事だと思います。
 僕も最近ロボット掃除機を買ったのですが、出先で「何かに引っ掛かって動けない」というメッセージが届いた時は心配で仕事が手に付きませんでした。この気持ちが、何か「宙に参る」の世界に繋がるヒントのような気がしてなりません。
 ここまで書きましたが、この世界には秘密がまだまだ隠されていて、早く続きが読みたくてたまりません。
 未来の話だけど、僕たちのすぐ隣にあるSF作品です!

お知らせ

  • /////単行本第3巻絶賛発売中!/////

    ソラと宙二郎を乗せた長期渡航型宇宙船は、いよいよ第2寄港地「ジヒ」へ。

    モド・サンコ教の教義と本殿建立にまつわる“面白い話”とは? 市民に愛され市民を愛しすぎたバスガイドが辿った運命は?

    AIがごく自然に人を愛し、人から愛される時代のお話。

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