土の上 2

 私の家は住宅地の一角にあり、東側と北側には他所の家が建っている。東側の家に住むおじさんはよく野菜を分けてくれる。北側に住んでいたおばあちゃんは去年から病院で入院していて今は空き家状態となっている。西側は木と草が茫々の空き地で、南側の庭の奥には林がある。冬には寂しげだった林の木々は今ではたくさんの濃い緑の葉を茂らせ、仕事部屋に座って南の窓の外を見やると、日に日に緑が迫ってくるような勢いを感じる。
 林からはウグイスの鳴き声やキツツキが木に穴を空ける音が聞こえてきたり、その他の名前を知らない鳥たちが銘々にさえずっている。時々キジの変わった鳴き声がして、その尾の長い美しい緑色の姿を現す。加えて、この頃は蝉が鳴き始め、林はより一層賑やかな厚みを増している。
 暑い時期の庭と畑の除草作業は過酷なものとなる。私は怠け者だから、いつも草が増えた頃に一気に取り掛かることになる。首に手拭いを巻き、帽子・長袖シャツ・長ズボン・長靴に身を包み、腰に蚊取り線香、手には軍手と鎌を装備して、通路を優先的に端から順に手当り次第に刈っていく。
 通路の草は土に鎌の先を入れて根本から引き抜くようにして、畑の畝の方は伸びた葉を刈って土の上に被せておく。これが黒いビニールのマルチ変わりになり、土の乾燥を防ぎながら野菜以外の草の発芽を抑える。おかげで水やりはほとんど必要ない。小さな畑ではあるけど、そうやってなるべく自然の営みに沿うような野菜作りをしたいと思っている。
 一気に取り掛かるとは言っても、除草作業を一日で終えることは難しい。文句を言う人は誰もいないから、できる時にできるだけ刈る。何日かかけて綺麗にした庭を見るととても満足に思う。
 作業後は全身汗だくになる。ベタベタと体に張り付いた服を脱ぎ、シャワーを浴びると生き返る。うちの水道の水はすごく冷たいから、最後に頭に冷水をかけると芯まで冷えて気持ち良い。その後昼寝ができれば最高だけど、そうは問屋が卸さない。寝ている私に娘は容赦なく話しかけてきて、そのうちに眠気は覚めてしまうのだった。

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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com