土の上 3

俳句日記1(二〇一五・一~十一)

なぞなぞを 出し合い疲れて風呂入る
字が読めぬ だから必死で 暗記する
字が読めぬ
母はそいつが愛しくて
まだ読めなくて良いと言う
知らぬ間に増えてる机上のおもちゃたち
今日も小さな手が置いてゆく
友人と電話する母見た後で
紙の電話で長電話する
スーパーでこの曲何?と子に聞かれ
答える私「世界はひとつ」
輪郭は見えないけれどそこにある
今を過ぎ行く朝を見ている
お仕事をしてるふりして子を見れば
寝そべり光と戯れており
保育所に響く歌声 耳入り
続きを歌い歩いて帰る
お別れの手紙に綴る思い出を
頭に巡らせ時を駆けてる
送別会
別れの実感湧き寂し
子にひっついて眠る夜かな 

星ひとつ見えぬ夜空が出迎える
これから始まる星探す日々
顔寄せて友の話に耳すます
そういうことを したいと思う
便出ぬ子
赤子の頃を思い出し
小さき腹を のの字にさする
鳥たちが文字通り歌うように啼く
金のなる木から金の実できたなら
「豆を買うの」と素朴な我が娘
ツルに付く雨の雫が海ぶどう
チョコレート齧って飲んだ濃いコーヒー
上の空 聴いてるラジオ
空中に天気予報が浮かんで消えた
夏服のセーラー服の肌寒さ軽さ蒼さを
思い出す春
涙出る 花粉のせいか 何なのか
絵を描き飽きても
なお描きたい光景が眼前にありて筆を走らす
子がご飯食べ終わるまで 仮眠取る
窓の外
揺れる木の葉の音聞きて
布団の中で子の幸願う
ゴミ屋敷にも美しく咲く紫陽花
十二時の鐘を待ってる 昼下がり
針を刺す 美しいボロい布に刺す
若い友
壁 床 散らばる瑞々しさ眩しく
後にするアトリエ 
肌寒い初夏に被せる
頼りないタオルケットの温もり 少し
君が居た時間が膨張して残る
劇的な毎日寝息と共に去りぬ
ゴキブリとの戦いに疲弊して就寝
帰り道 アケビ熟れたか待ち遠し
帰り道 手に花アケビ 秋の風
コスモスの種まき歩く 人の土地
マッチ擦り 露に湿気った薪燃やす
未明の空に星無数
瞬いて夜空に散りゆく火の粉追う
道端に見つけたカラスウリの様に
朱色に染まりたい 今の気分
編み目図を目で追いかけて過ぎる土曜
やりたいことやったもん勝ち
青春の意味も知らぬ子が歌う 延々
今日君の見る街の灯の明るさを
暗い外見てふと想う

◇◇◇◇◇
《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com