土の上 21

俳句日記4(二〇一七・六~十一)

気怠そな娘 うつろに天井見つめ
「けいちゃんも
おたまじゃくしの足見たい」
気配を消して 田んぼを覗く
一山ずつ 交互にケーキの山崩す
風吹けば 田の稲の波 寄せては返す
椅子のモノマネして
「この椅子どこだっけ?」
晩ご飯は
「うどん」か「ぎょうざ」がいいと
尻文字
「きょうわたしはほんをよみました」

尻文字で

夜の道 街灯照らされ 打ち水輝く
かさぶたが十八個ある 夏休み序盤
早足の人の流れに紛れてる
田舎のネズミ 街に溶けてく
ぼーっとする練習している横顔を
眺める視線に ぼー は途切れて
給油口 時差で感じる 君の力
動き止め 目線をくれる カマキリ撮る
水張った田んぼに映る
赤色の夕日
日記に記す夜
隣人と夜中三時のフクロウの話

洗面所 曇った鏡に「まま」と書く
小さな指をよく覚えとこう
チチヤスをチャチャス 
ローリエ ロリーエで
チャイコラスキーにビーターチョコ
振り返ると追いかけてくるのは柿の葉
寝転んで逆さに覗いた月も丸
水餃子
ジップロックにタレ
外帶(ワイダイ)
おおらかというのか
おおざっぱというのか
林立して立ち並ぶビル 日当り悪かろう
雨に洗われ
現れた蜘蛛の巣の数を数えて歩く道

さっきより さっきより
さっきより大きい
フーセンできた ガム吹く休日
さっき掘った 山芋 むかご 食卓の上
深緑に朱色冴え渡る 今年も カラスウリ
日記でも「まま」と書いてるのが可愛い
窓の外 ウルシ科の葉から 紅く染まる
しょしゃの時間
なかよしなかよし ばっか書かされる
美しく刈られた植木の曲線に
信号待ちの視線捧ぐ
台所 金槌がある 傍ら ギンナン

食べ飽きた レンコンの穴 箸通す
米炊けるまで 君と少し電話する
米炊けるまで マフラー編む 数センチ
その人が話しているかのような手紙
木漏れ日の緑の光線 部屋に射る
棒から棒 輪の連なりが面となる
時連なったマフラーかな
枕元 一章ずつ 物語読む

二度寝から目覚め
ここどこ いまなんじ
慌てふためき我返る
柚子の香 浮かべて浸る 初冬の夜  
柚子の皮 風呂の中では腕輪になる
パチパチと薪燃ゆる火
ただただ見ていたい
◇◇◇◇◇
《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com