土の上 24
宮崎信恵
冬の庭は、隣の空き地から飛んでくる葉でいっぱいになる。綺麗に手入れをしている人にとっては迷惑かもしれないけど、消毒されていない木の葉は畑の良い肥料になる。だから、毎年たくさん葉が落ちているのを見て密かに喜んでいる。
隣の空き地の木はいくつかの種類があるみたいだけど、庭に落ちてくる葉は主に二種類のようだった。家沿いに生えている木はクヌギとビワだ。ビワは常緑樹で冬でも濃い緑の葉をつけている。このビワは梅雨時に全然甘くない実を付ける。全く美味しくないけど、実を採るのが楽しくてついつい手を出してしまう。その実が何であれ、木の実を採って食べるのはなぜだか妙に楽しい。
クヌギの木は数本あるのだけど、一本だけ出来損ないの下手糞なドングリをつける木がある。これを見ると、木にも不器用なものがあるのだなぁと思う。人と同じで色んな木があるのだろう。
先ほど、落ちてくる葉は二種類だと書いた。一種類はクヌギの葉で、もう一種類はクヌギに巻き付いているクズ(葛)の葉だ。クズはツル性の植物で、繁茂力が旺盛で夏には隣の空き地一面を覆い尽くす。道路にまで伸び出てくるツルの先端は、得体の知れない生き物の触手のようで少し不気味に感じる。そこら辺の鬱蒼とした緑地を見ると、クズが猛威を奮っているのをよく見かける。うちの庭にも気付くと生えていて、アスパラのふさふさとした株に絡み付くと、取り除くのに苦労する。
クズはクヌギよりも葉が大きいため、クズに乗っ取られたクヌギは存在感がなくなり、まるで「クズの木」のようになっている。クヌギに絡み付いて見る景色は、地面を這っていた時に見た景色よりも良いものなのかもしれない。木の高みから、大きく蓄えた葉をひらひらと風に乗せて遠くまで落として、クズもこの生活に満足していることだろう。
午後の仕事の合間に、洗濯物を取り込みがてら庭に出て体操をしていた。ふとクズの木を見ると、西陽を背にいつもより神々しく輝いて見えた。
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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com