土の上 37
宮崎信恵
先週は雨が多く、洗濯物がたくさん溜まってしまった。この週末は気持ち良く晴れたから、洗濯機をたくさん回した。洗濯物を干しに外に出ると、花粉があちこちに浮遊しているような気がして、心なしか顔まで痒くなってくる。私はイネ科の花粉症で、今の時期はあまり反応しないのだけど、この頃は少し感じられるようになってしまった。四方八方の山々から飛散する花粉が、この数年で私のコップをいっぱいにしつつある。
家の周りに木や草が多いため、自ずと虫も多くなる。もう少し暖かくなって来たら、庭は蚊だらけになり、酢橘や柚子などの柑橘の葉に付く蝶の幼虫や、夏のオクラの葉を食い尽くす虫を捕えるのに躍起になる。
先日、草抜きをした時には土の中にムカデを発見した。私がこの家に住み始めてから最も恐れているのがこのムカデだ。ゴキブリやクモも出るけど、そのギョッとする見た目はムカデには到底及ばない。水道管から上がって来たり、わずかな隙間から部屋へ入り込んで来ては不意に目の前に現れるムカデ。気づけば体の上を歩いていたり、足元に居たり、洗面所やお風呂場に潜んでいるムカデ。異名を百足と呼ぶ字の如く、その無数の足を動かしながらゆらゆらと歩く様がこの上なく不気味なムカデ。発見する度に火バサミで挟み、確実に息の根を止めてから外へ捨てる私。私が火バサミを取って来るまで、目を離さずにムカデを追う娘。力を合わせて家の中から一匹ずつ確実にムカデを排除する私たち。そんな攻防が繰り広げられる日々が今年もやって来ようとしている。
虫のことを考えると憂鬱になるけど、長く寒い冬を越えて迎える春は、やはり何物にも代えがたい嬉しさがある。近所の家の庭に咲き誇る花々を見ているだけで、幾らか気持ちが軽くなるようだ。春の花の華やかさ、夏の緑や海と空の青、秋の紅葉、冬の雪景色など、季節ごとの変化はそれぞれにいとをかしく、清少納言が『春はあけぼの』を書きたくなった気持ちもわかる。これらの変化がなかったなら、世界はもっとつまらないものだっただろうなぁとも思う。ただ、地球のコップもいっぱいになっているようで、温暖化など気候にも様々な影響が見られる。改めて、地球に優しい生活をしたいなぁと、春の夜に思いを新たにする私。
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《著者プロフィール》
宮崎信恵(みやざきのぶえ)
1984年徳島生まれ。
STOMACHACHE.として妹と共に雑誌などのイラストを手がける。
その他、刺繍・パッチワーク・陶芸・木版画・俳句・自然農を実践する。
http://stomachache.jp
http://nobuemiyazaki.tumblr.com