それでも俠(おとこ)は優しくあろうとした。
十九歳の若き柔術家・柳勘九郎は父の遺訓である「打倒・講道館柔道」を胸に上京する。
文明開化に揺れる東京の街。青春の彷徨。理不尽と不条理、矛盾と欲望ー男の胸を、誰が知る。
学生運動の嵐吹き荒る1970年代、右も左も読んでいたーー「今」を生きる全ての人に。バロン吉元の最高傑作が蘇る。

バロン吉元(Baron Yoshimoto)
1940年、旧満洲国奉天市生まれ、鹿児島県指宿市育ち。
1959年マンガ家デビュー。劇画の隆盛と共に多数の作品を発表し、代表作の『柔俠伝』シリーズを10年間にわたり連載。
しかし1980年、全ての連載を終わらせ単身渡米、マーベル・コミック等で執筆。
帰国後はマンガ執筆と並行し、絵画制作に着手する。
画業60年を迎えた2019年には日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞。
2024年、自身にとって約20年ぶりとなる新作劇画『あゝ、荒野』(原作:寺山修司)を「コミプレ」で連載開始。アメリカ、イタリア、フランスでは過去作の翻訳が出版されるなど、現在に至るまで国内外で活動中。(撮影/手塚憲一)