トーチ

昭和柔俠伝

「昭和柔俠伝」

戦火の足音より速く、少年少女の若き鼓動が走り出す——。

本作は第二次世界大戦を背景に、
理不尽・不条理が渦巻く世の矛盾や混沌が、容赦なく描き出されます。
少年・柳勘太郎は、信念を貫く瞬間もあれば、
時に揺らぎに身を委ねながら、ひたむきに「今」を生きていく。
多情にして義侠心あふれるその在り方は、バロン吉元が掲げる哲学の結晶であり、
学生運動が隆盛を極めた連載当時、「右も左も読んでいた」と語られる理由でもあります。

連載開始から半世紀。
激動の時代を手探りで迎える感覚は、私たちと勘太郎を確かにつなぎます。
「今」を歩く一人ひとりの道しるべとなり、一隅を照らす燈火となることを願って。
『昭和柔俠伝』をトーチの戦後80年特別企画として復刻します。

〈次回「第1章 純情なり その4」は2025年11月21日(金)更新です〉
✴︎『昭和柔俠伝』上巻 2025年11月29日(土)発売✴︎

———————————

※作中表現に関して※
『昭和柔俠伝』は1971〜72年にかけて「週刊漫画アクション」(双葉社刊)で発表された作品であり、1936年から第二次世界大戦下に至る時代が描かれています。当時の社会的背景や価値観を色濃く反映しており、現代では不適切とされる差別的な表現、性的描写や性暴力の場面、残虐な描写が含まれます。これらの表現は作品の時代性や物語の背景を描くためのものであり、いかなる差別や暴力、性暴力を肯定するものではありません。閲覧にあたって不快感や不安を覚える可能性がある方は、ご自身の判断のもとでお読み下さい。

作者プロフィール

バロン吉元(Baron Yoshimoto)

1940年、旧満洲国奉天市生まれ、鹿児島県指宿市育ち。
1959年マンガ家デビュー。劇画の隆盛と共に多数の作品を発表し、代表作の『柔俠伝』シリーズを10年間にわたり連載。
しかし1980年、全ての連載を終わらせ単身渡米、マーベル・コミック等で執筆。
帰国後はマンガ執筆と並行し、絵画制作に着手する。
画業60年を迎えた2019年には日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞。
2024年、自身にとって約20年ぶりとなる新作劇画『あゝ、荒野』(原作:寺山修司)を「コミプレ」で連載開始。アメリカ、イタリア、フランスでは過去作の翻訳が出版されるなど、現在に至るまで国内外で活動中。(撮影/手塚憲一)