こんにちは、トーチweb編集長の関谷です。
偶数月一日前後に全国の書店マンガ担当の方に向けて『トーチ通信』、通称『トー通』という機関誌というか手作り新聞を発行しています。直近でもう第23号になりました。そこで「老後を考える」というコラムを毎号書いていまして、今回はその記事を加筆修正してお送りします。
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5月に中途採用で編集者3名が入社しました。男性1名、女性2名、全員25歳以下の若者。他部署に配属される編集者ではあるものの、オリエンテーションとしてトーチ編集部にも半日くることになり、入社13年目の僕が見聞きしたりこれまで経験したことを彼らに伝えるとして他に何を話そうかと考えていました。
僕らのオリエンテーションは散歩しながら話そうということでまず参宮橋のLIFE sonで昼食をとりながら談笑し、明治神宮の裏の森を散策しながら簡単なゲームを小一時間、さらに代々木公園内のブルーシート住居群を抜けてLittle Nap COFFEE STANDで休憩して17時に帰社という東京散策。人となりを互い掴む程度にはコミュニケーションはとれたと思うが、僕らのやってきたことやリイド社がどういった会社でなんで最高にいい会社だと感じているのかという話や「陰で人の悪口を言わない」とか「人と比較しない」とか「失敗してもいい」とか基本的な話にとどまり、限られた時間で初対面の人に何かを伝えるのは難しいなぁ…と改めて痛感して帰ってきた次第。色々と話したかったことも「所属する部署の歴史や文脈をふまえて働きながら少しずつ自分のやりたいことを素直に表現していってください」ということくらいしか伝えられなかったので、話そびれたことを少し書きます。
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僕はあなたが誰で何なのかを知りたい。今のあなたを構成する無数の粒子の記憶の物語を知りたい。過去にどのようにして生まれ育ち、何を感じどう振る舞ってきたのか。何と出会い、諦め、どのように選択し決断してきたのか。そしてあなたと同じように他者が存在すること、チームや会社も同様に無数の粒子の物語があることを知ってもらいたい。その物語の先にあなたが何を思い描くのか、過去の記憶から未来を予期して歩行し、発声発音ダンスの粒子でもって、あなたとあなたの家族的なものたちとの持続する物語を綴ってほしい…「エラン・ヴィタール!」なんて、ややロマンチックな話。
こうして簡単に書くと何とも味気ない。そしてこれを話す話術がないので、今こうして書くこともおぼつかず、なんとも惨めな着地が語るに足る人間ではないということをまた痛感させるのですが、これこそが僕の短い人生で直観している歓びであることは間違いありません。
堀田善衛によるバック・トゥ・ザ・フューチャーの解釈(映画タイトルに何かを感じた氏が後に古代ギリシャの吟遊詩人ホメーロスが作者といわれる『オデュッセイア』を読んで裏付けた気付き。紀元前の時代から過去と現在が我々の前方にあり、未来は我々の後方にあると考えられていた。)、背中から入っていく未来、ムーンウォーク…いま僕はトーチをかかげて一投足すら未知の着地点を一歩ずつ踏み抜きながら未来へと背面歩行して生きているのです。
■Michael Jackson – Billie Jean – Live At Motown 25 1983(First Moonwalk)
4:10あたりからファースト・ムーンウォーク、その熱狂たるや…全編通じて最高の映像ですね。