よくきたな。おれが編集長の中川だ。
漫画編集者を名乗るお前らが腰抜けとゆうことはすぐにわかった。その無課金ユーザーみたいな裸同然の装備では、漫画業界とゆう名の荒野では生きていけない。
おれにこう言われたお前らはどうせ即座にスマッホンをONにし、ChatGPTに「どうしたらいいか教えて」とかきくのだろう。お前らの行動は見え見えで、ここでは人工知能ときゃっきゃうふふしてる間にダニー・トレホのナイフで殺される。
この過酷な荒野で真の編集者すなわちバンデラスになるためのtaskをおれが今から与えてやる。おれが1日にこなすtaskは2億個ある。腰抜けのお前たちのために3個くらいにしといてやる。生きてここを出たい奴はやれ。
◾️task1:青色ひよことかゆうイカれたクソビッチが血反吐まき散らしながら描いた『彼岸花』とゆう漫画が12月12日に出た。買え。
◾️task2:おれは6年前にこうゆう文章を書いた。読め。
トーチ編集部ブログ「誰が読者か」(2019.4.10)
◾️task3:『彼岸花』には帯がない。なぜか。聞け。
おれたち漫画編集者が世に送り出しているのは「魂の食い物」だ。「漫画は魂の食い物」。伝説のメンター、ヨシユキ・クリハラの言葉だ。この男の名前を覚えておけ。「モーニング」「アフタヌーン」を創刊した真の男だ。魂の食い物すなわち魂のドリトス。なぜ漫画は「お食事」でも「食料」でも「デザート」でも「サプリメント」でもなく「食い物」なのかわかるか? なんで? と思ったお前は今、反射的にスマッホンに手を伸ばした。お前は今すぐそれをロメロスペシャルでへし折り、全裸絶叫で高円寺北口ロータリーを1周してこい。ポリスには俺が話をつけておいた。
戦争、虐殺、貧困、差別、格差・・・いいか、現代人のソウル・ポイントは残り少ない。立法・行政・司法・マスコミ、堕落し凶暴化した四闘神の弱パンチをあと一発でも喰らえばお前はスローモーションで空中に投げ出され血反吐を撒き散らして息絶える。お前は自分が死んだことにも気づかず、亡霊となって・・・・荒野をさまよい・・・・END OF MEXICO・・・・今すぐライフを回復しなければ死ぬとゆう時に、お前は胸にナプキンをかけ、ナイフとフォークを構えて一皿目がserveされるのを待つか? 骨つき肉、おにぎり、缶詰、フルーツ、変なキノコ、地面すなわちstreetに落ちているものは何でも手当たりしだいむさぼるはずだ。それが「食い物」だ。
本の帯とゆうのはチラシだ。全て、一つ残らず、広告宣伝のために作り出され工夫されたものだ。漫画は月に1000点以上、年間で1万点を超える新刊が刊行される。そのすべてに帯がまかれている。それらは①短詩(キャッチコピー)、②商品説明(概要とかあらすじとか)、③お得情報(〇〇万部突破!とか〇〇賞受賞!とか〇〇で紹介されました!とか)、この3つで構成されている。日々2億個のtaskをこなすおれは、この世のあらゆる本の、あらゆる帯の、あらゆるメッセージを一撃で要約することができる。「買ってください」だ。おれたち商業漫画の編集者は不特定多数の人間にただこのことを伝え、行動を促すために、あれこれ頭をひねりライフを使う。
漫画は魂の食い物だと言った。帯が広告であることも言った。地面すなわちstreetに落っこちている「食い物」に広告が要るか? そうきかれて「要らないかも」と思ったお前がtask2をこなしていないのは見え見えで、強制的に前のステージに連れ戻される。お前はそこでロンダルキアの無限ループにハマり・・・幻の宿場町に迷い込み・・・行きつけのサルーンで「おれはむかし漫画の編集者だったんだぜ」などと吹聴し・・・ベイブといい仲になり・・・・・年老い・・・・家族に囲まれ、オレンジ農園の日差しを浴びながら息を引き取る・・・・・・END OF MEXICO・・・・
おれはかつて日本のSEIBU LINE沿いに隠棲する伝説の剣術家、マスター・トミの教えを受けた。そこで学んだのは、ニホン・ソードを用いた決闘では、鞘から抜いた刀をいち早く相手の急所に到達させた者が生き残るとゆうことだ。刀を抜く、相手の隙を窺う、振り上げる、力をこめる、振り下ろす・・・・こんなことをしている間にダニー・トレホのナイフは一瞬でお前を仕留める。居合の達人は刀を抜いた瞬間にもう斬っている。抜即斬。そして真の達人すなわちバンデラスならば刀を抜く一瞬すらも必要としない。抜く前からすでに相手を制している。
task2をクリアし、ここまで辿り着いたお前たちには理想の帯の形が見え始めているはずだ。最小の手数、最短距離、最短時間で最大の効果を上げるもの・・・・そう、そこに書かれているのはたった2文字。「買え」。そしてそれを見た全員が「買わねば」と思い、買う。帯即買。これだ。
【権威】他の者を服従させる威力。
帯を作る行為は作品を権威付けし、見るものを従わせようとすることだ。帯が、それを見た者に何らかの行動を促すことを目的とするものである限り、それは必ず権威主義的に振る舞うことになる。「え、権威主義者にはなりたくないなあ。どうしようかなあ・・・」そう思ったお前は反射的にスマッホンを手にした。2秒やる。踏み潰せ。商業漫画の編集者であるおれたちはこの宿命からは絶対に逃れられない。いいか、絶対にだ。我は山賊、うぬが袴をかすめとらむ。逃れらぬならば徹底的にやれ。
おれは商業漫画の編集者として100冊以上の単行本を担当してきた。権威主義・商業主義の申し子としての宿命を真っ向から受け止め、その道を極めるべく過酷な修行の日々を送ってきた。おれはあの最凶のヘル・オブ・ヘル『死都調布』の生き残りだ。ドン・サイトーに耳を撃ち抜かれ、額にG.U.Nを突きつけられたおれは、薄れゆく意識の中で声を聞いた・・・帯なしで・・・良いという・・・提案・・・・7年前あの町をサバイブした後もおれの脳裏からその声が消えることはなかった。見た者に買うかどうか迷う時間はおろか、そこに書かれている文字を読む時間すら与えぬゼロレンジ帯。この究極の帯に耐えうる作品が次に到来するのを待ち続けた。そして・・・・
おまえは全身超イルどぐされパンクス・青色ひよこのブロゴを読んだか? 青色が自作に帯は要らぬとわめき散らしている。「帯なし」は権威主義と商業主義に対する拒絶の表現だと。
おれは逆だ。権威主義と商業主義を徹底的に突き詰めた果ての「帯なし」だ。『彼岸花』には帯がない。のではない。おれのつくった帯が速すぎて見えないだけだ。
おれと青色は確かに別々のdungeonを潜り抜けてきた。だが、2人が命からがら抜け出した先、そこはなぜか同じ場所だった。
青色は言った。なぜお前のような商業主義者がここにいる?
おれはおもった。なぜ編集者でもないこの女が究極の帯の形を知っている?
そしておれはもう一つおもった。さっきからぼんやりこちらを眺めているこの男は何者だ? 常人なら2秒ともたぬこの地獄に平然と佇むこの男・・・・・市川夕太郎。おれのtaskに耐え抜いたお前は、次にこの男からBonusTaskを授かることになる。出版業界のど底辺をサバイブしてきた正真正銘のクソ野郎だ。気をつけろ・・・
おれのいいたいことは以上だ。おまえは今すぐ『彼岸花』を書店で書うかネットでpo-chillかしろ。そしてお前は幻のオレンジ農園に置き去りにしてきたhardcoreを取り戻せ。真の男であるおまえ自身の拳によってだ。
(編集部・中川)
ーーーー
本稿執筆にあたっては逆噴射聡一郎師の構文を勝手に拝借した。リスペクトだ。