トーチ

2020年8月6日 木曜日

『自転車屋さんの高橋くん』第16話を読んで思う、セクハラ痴漢などの性犯罪問題

みなさま、いかがお過ごしですか。編集部員の信藤です。夏、始まったね〜〜!やっぴぃ!
いつも軽いノリの文章ばっかりなのでちょい恥ずなのですが…今回は真面目な内容をお送りしようと思います。

先日公開した『自転車屋さんの高橋くん』第16話ですが、私は今回を含めた3巻収録予定のネームを読んで、この作品は本当にすばらしいと改めて実感しました。ネタバレしないようその理由を説明しますと、主人公二人の関係性を楽しむという恋愛マンガとしての大前提の魅力は損なわずに、私たちがもっと意識して考えないといけない社会の根深い問題をさらっとストーリーに盛り込んでいるのです。

私は長年疑問と怒りを感じているのですが、我々のセクハラ痴漢淫行に関する問題意識って、あまりにも低すぎると思いませんか?芸能人の不倫や大麻に関するどーーーーでもいい報道ばっかりされていて、性犯罪や女性差別に関するニュースって気をつけていないと全然耳に入ってこない。

『自転車屋さんの高橋くん』第16話で、パン子が上司からセクハラされていることを知った高橋くんが「なんであんなやつの言いなりになってるんだ」と反論するシーンがあります。この一連の流れを受けて、セクハラ問題についてSNS上でコメントしている方がとても多く、私は本当に嬉しかったです。そして私も一読者として、この問題に関する自分自身の考えをきちんと言語化して表明したいと思います。

去年の春〜夏頃、私は度重なる痴漢の被害に悩まされていました。満員電車にほとんど乗らないにも関わらず、様々な場面で嫌な思いをするのです。すれ違いざまに触られ、卑猥な言葉を囁かれ、がら空きの電車内や駅ホームでつきまとわれ…。
このままでは男性のことが丸ごと嫌いになってしまいそうなほど、心が疲れていました。痴漢をしてきた奴らと同性である人たちに親身になって話を聞いてもらって、そんな男ばかりじゃないと思いたい…。しかし、身近な男性たちに悩みを打ち明けた時の衝撃、もう一生忘れられません。

「なんで抵抗しないの?」(32歳・わりと仲のいい友人)
「もうちょっと気をつけて歩いたら?」(42歳・昔好きだった人)
「でもイケメンだったらいいんでしょ?」(39歳・飲み友達)
「そんな格好してるからでしょ」(29歳・すごく仲のいい友人)

これらのコメントをした方々とは一切の関係を絶ちました。いや〜、本当に年々友達が減っていくなぁ…。でも、痴漢されるのは私が不注意かつ破廉恥な格好をしているせいで、イケメンに触られたら喜ぶと思っていて、抵抗しないんじゃなくて抵抗できないんだということも分からん、知性も想像力も足りていないお友達は、もういらない。そしてこの四人に共通しているのが、「女性のことをすごく尊敬しています、同性よりも女友達の方が多いです」とよく言っていた点です。実はこの人たち、深層心理で女性のことを蔑視しているのを隠すために、わざわざそういうことを口にしていたのでは…?

しかし痴漢・セクハラに関する話は、女性間でもゾッとする事があります。

「私、痴漢されたことないからちょっと羨ましい…。
だって、痴漢されるってことは、女として魅力があるってことでしょ?」

とある女友達のコメントです。私は気が遠くなってしまいました。
違う、絶対に違う。痴漢される・されないに、魅力の有無なんて関係ない。悔しさと怒りと悲しみで、脳みそがどうかしてしまいそうだ…。でも、「痴漢されたことがない自分には、魅力がない」と思っている女性は、実は少なくないのです。「セクハラされるのは需要があるってことだよ」「いっつも痴漢の話してるけど、モテる自慢入ってない?」女友達からこう言われた経験は、一回や二回じゃない。こんな悲しい考え方をさせてしまうこの世の中が憎くてたまらない。セクハラも痴漢もあなたに非があるから仕方がないと言われるのはもう嫌だ。もうどこにも行きたくないし誰とも会いたくない。何も見たくない。

痴漢やセクハラ、淫交に対する罪の意識って、どうしてこんなにも薄いのでしょうか。そして『自転車屋さんの高橋くん』に出てくる上司のセクハラ言動を見て、「今時あんな人間いないでしょ」と言う方、どうしてそう思うのか教えて欲しい。
不意に身体を触ってきたり、恋人がいるいないを勝手に予測してからかってきたり、酌をしろとプレッシャーを与えてくる人間。昔はいたけど、もういないと思う?

いなくなってなんか、いない。
都会でも田舎でも関係ない。
どうしていないと思ったんですか?
見えていないだけ、経験していないだけ、考えたこともなかっただけでは?

ブックオフですれ違いざまに尻を鷲掴みにされた初めての痴漢。その時私は白くて細身のサブリナパンツを履いていて、母親から「それはあんたにすごく似合ってるし、本当にこんなこと言いたくないけど、もう履かないようにしよう」と言われたのをよく覚えている。小学校の林間学校の夜、用を足してトイレのドアを開けたらすぐ真ん前に中年の男性担任教師が立っていて、ニヤニヤと見つめられたこと。中学校の帰り道にスキンヘッド白装束の男に目をつけられて、家のドアの前までついてこられたこと。飲み会の帰り道、終電に乗るために改札を通ろうとしたその瞬間、見知らぬおっさんに突然腕を掴まれてホテルに連れ込まれそうになったこと。ここに書けないような痴漢やセクハラもある。どんなに昔の出来事でも、当時の怒りも悲しみも恐怖も全く薄まってなんかいないし、全員殺してやりたいと今でも思っている。

セクハラや痴漢について、どう思っていますか?
セクハラをされた人に対して、どんな言葉をかけますか?
そういったことについて、私たちはもっと話し合って、考えるべきだと思っています。