トーチ

2022年9月14日 水曜日

トーチ8周年記念のgifアニメについて、旅の記憶(岡野)

はじめまして、トーチwebでバナーや販促物などを作るデザイナーとして関わっております、岡野と申します。
最近の大仕事としては、トーチweb 8周年記念企画として、バナーをgifアニメにして期間中毎日更新する、という企画と制作をさせて頂きました。

最近単行本の出た作品を題材に短いアニメを8本、初日と最終日の扉アニメを加えると計10本のgifアニメを制作しました。それらを作っていく中で、結構デフォルメもし、短いシーンでもあるのにどの作品か分かるというのは、元の漫画やキャラクターの強さがしっかりあるからこそなのだ、ということを改めて強く実感しました。強い原作があるからこそ、アニメを見た人が脳内で物語を補完できるというか。
とはいえどう切り取ってもいい訳ではなく、その作品の象徴的なシーンや、らしさのある動きを抽出する必要はもちろんあります。だからこそ、これを毎日更新するというのは大変なことだぞ、と我が案ながら不安を覚えたのも事実です。しかし、私はどうしても毎日更新をしてみたかった。その説明のために、少し長い思い出話をします。

最近90年代のCD-ROMゲームが自分の中でアツく、幼少期にプレイした記憶を辿っては動画やブログを掘り起こす活動を夜な夜な行っているのですが、その中でも特に大きな影響を受けたのがたむらしげるさんの『ファンタスマゴリア』というソフトです。同タイトルで絵本や短編アニメにもなっているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
小さな惑星ファンタスマゴリアというものが宇宙に浮かんでおり、そこにはガラスでできた海や、星人たちが集まるバーや、巨大なキノコの森があります。プレイヤーはこの惑星を移動して周り、そこで起きる事件や日常を目撃し、たまに住人たちの噂話などを耳にする、このゲームで出来ることはただそれだけでした。アイテムを集めたり、こなすべきミッションもなく、そもそも干渉する事もほとんど出来ません。しかし、だからこそ私はこのソフトにのめり込み、毎日のように起動し、この惑星を旅したのです。
幼少期から勝ち負けに全く興味が湧かず、当時伝説的に流行したポケットモンスターでさえ、プレイしたものの最終的になるべく人と遭遇するのを避けて街をサイクリングしていた私には、なにもタスクがないゲームが心地よかったのでした。例えば旅行に行った時などに、計画に追われて忙しない気持ちになった事がある方なら分かってもらえると思います。自分ももっぱらゆったりノープラン派です。やるべき事がないって素晴らしい!

何も出来ずにただ見て周るだけの何がそんなに面白いのか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、綿密なプログラミングによって惑星は訪れるたびに違う表情を見せるので、毎日のように各地を訪れ、今日は何が起こるのか、または何も起こらないのか観光して周るのに飽きることはなかったのです。

※現実の季節と同じ時間が流れ、起こるイベントが変わったりしていました。例えば、ハロウィンの頃にはゴーストタウンがお祭り騒ぎになり、冬は大盛況のスケートリンクは夏に訪れると氷が溶けて蓮の咲く静かな池になっています。訪れるたびに違う幻を見せる”酔っ払いの街”もありました。

※作者のたむらしげるさんご本人のTwitterによると「プログラマーの遊び心で70年に一度起こるイベントがあるらしい」という事も判明しました。気になって仕方ありません。

私は今年の1月からここで働き始めたのですが、入社前に読んだトーチwebの紹介にある<「トーチ」はリイド社が運営するwebサイト上にある辺境の観光地です。>という表現が印象に残っていました。観光地なんだ…なんか…ゆとりがありそう。その事が8周年企画のビジュアルをどうしようか…と考えた頃に突然思い出され、深夜だったのが作用し、ファンタスマゴリアをプレイしていた頃の記憶がすごい勢いで結びつき、そうだ、一見変わらないように見えて毎日何か違う事が起こっているようにしよう、そしてそれはトーチwebという観光地を旅する車窓の風景なのである、という発想に至ったのでした。これが冒頭の、なぜ毎日更新しなければならなかったのか、なぜ各作品の短いアニメーションを作ったのか、の長い説明となります。

最後に謝辞を。
突然試作のgifアニメを送りつけて「こういうのやりたいです」とデスクに押しかけた私に、快くやりましょう!と言ってその後もアニメが出来上がるたびに「最高です」と応援してくださった中川さん、安易に満足している私に「こうすればもっとよくなるはず…」とアドバイスしてくれ、クオリティを爆上げしてくれた望くん、映像編集技術がない私の代わりに、私の拙い説明を理解し素晴らしい映像に仕上げてくれた上に、毎晩更新作業をしてくれた加藤さん、毎回感動的なアツい応援をくださるエ☆ミリーさん、突然のエラー発生ドタバタ時に冷静な判断で解決に導いてくれた板谷さん、ありがとうございました。
そして内心ドキドキしていたのですが、更新のたびに反応くださった作家のみなさん、読者のみなさん、本当にありがとうございました。

引き続きトーチwebでの旅をお楽しみいただけたら幸いです。

(デザイナー・アルバイト)岡野